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気づいたら太ももに青あざができていた、という経験はありませんか。「あれ、いつぶつけたんだろ」と思い返しても、心当たりがないこともあるでしょう。
太ももは身体の中でも面積が大きく、衣服で隠れているため、知らないうちに内出血が生じていることがあります。軽い打撲であれば数日で消えますが、頻繁に繰り返したり、原因が思い当たらない場合は注意が必要です。
内出血は皮膚の下の毛細血管が破れて血液が漏れ出た状態です。見た目には青紫色や黄色っぽく変色して見えます。多くは自然に治りますが、身体からの大切なサインである可能性もあります。
太ももの内出血には、日常生活の中で起こりうる外的要因から、身体の内側に潜む健康状態まで、さまざまな原因が考えられます。一つずつ詳しく見ていきましょう。
最も一般的な原因は、何かにぶつかったり転倒したりすることによる打撲です。太ももは身体の中でも大きな筋肉がある部位なので、ちょっとした衝撃でも内出血が起こりやすい場所といえます。
スポーツをしている方なら、接触プレーや急な方向転換で太ももを打つことがあるでしょう。また、家の中でテーブルの角や椅子の脚にぶつかることも意外と多いものです。夜中にトイレに行く際、暗い中で家具に接触してしまうケースもよくあります。
打撲直後は痛みを感じても、時間が経つと忘れてしまい、後から青あざを見て「いつぶつけたっけ」となることも珍しくありません。特に忙しい日常を送っている方は、小さな衝撃を記憶していないことがあります。
年齢を重ねると、血管壁が薄くもろくなり、ちょっとした刺激で内出血が起こりやすくなります。これは自然な老化現象の一つですが、個人差も大きいのが特徴です。
50代以降になると、コラーゲンやエラスチンといった血管を支える成分が減少します。その結果、血管が破れやすくなり、軽い衝撃でも内出血が生じるようになるのです。特に太ももは皮膚が薄い部分もあるため、内出血が目立ちやすくなります。
また、長年の紫外線ダメージも血管の脆弱性に影響します。日光をよく浴びる生活をしてきた方は、皮膚や血管が傷みやすい傾向があります。
ビタミンやミネラルの不足も、内出血のできやすさに関係しています。特に重要なのがビタミンCとビタミンKです。
ビタミンCはコラーゲンの生成に欠かせない栄養素で、血管壁を丈夫に保つ働きがあります。不足すると血管がもろくなり、内出血しやすくなってしまいます。喫煙者やストレスの多い生活を送っている方は、ビタミンCが消費されやすいので注意が必要です。
ビタミンKは血液凝固に関わる栄養素です。不足すると血が止まりにくくなり、内出血が広がったり長引いたりする原因になります。極端なダイエットや偏った食生活を続けている方は、ビタミンK不足に陥りやすいでしょう。
服用している薬によっては、副作用として内出血ができやすくなることがあります。代表的なのが抗凝固薬や抗血小板薬です。
これらの薬は血栓を予防するために血液をサラサラにする働きがありますが、その結果として出血しやすくなります。心筋梗塞や脳梗塞の予防で服用している方も多いでしょう。医師から処方されている場合は、自己判断で中止せず、気になる症状があれば必ず相談してください。
また、ステロイド薬を長期間使用していると、皮膚が薄くなり血管も弱くなります。喘息やアレルギー疾患で継続的にステロイドを使っている方は、内出血ができやすい傾向があるのです。
サプリメントでも注意が必要なものがあります。魚油のオメガ3脂肪酸やイチョウ葉エキスなどは、血液の流れをよくする効果がある反面、出血しやすくなる可能性があります。
女性の場合、ホルモンバランスの変化が内出血に影響することがあります。特に生理前や更年期は、ホルモンの影響で血管がもろくなりやすい時期です。
エストロゲンという女性ホルモンは、血管壁を丈夫に保つ働きがあります。閉経前後でエストロゲンが急激に減少すると、血管が弱くなり内出血しやすくなるのです。40代後半から50代の女性で、以前より青あざができやすくなったと感じる方は、ホルモン変化が関係しているかもしれません。
また、ピルを服用している方も、ホルモンの影響で血管に変化が生じることがあります。気になる症状がある場合は、婦人科で相談してみましょう。
意外に思われるかもしれませんが、ストレスも内出血のできやすさに関係しています。強いストレスが続くと、自律神経のバランスが崩れ、血管の収縮と拡張がうまくコントロールできなくなるのです。
交感神経が過剰に働くと血管が収縮し、血流が悪くなります。その状態が続くと血管壁に負担がかかり、ちょっとした刺激で破れやすくなってしまいます。仕事や人間関係でストレスを抱えている方、睡眠不足が続いている方は要注意です。
慢性的なストレス状態では、副腎から分泌されるコルチゾールというホルモンが増加します。このホルモンが過剰になると、血管が弱くなり内出血が起こりやすくなることがわかっています。
頻繁に内出血ができる場合や、原因が全く思い当たらない場合は、何らかの病気が隠れている可能性も考えられます。
血小板減少症は、血液中の血小板が少なくなる病気です。血小板は出血を止める役割があるため、不足すると内出血が起こりやすくなります。太もも以外にも、腕や脚、口の中などに複数の内出血が見られる場合は注意が必要です。
紫斑病は、皮膚や粘膜に点状や斑状の出血が現れる病気の総称です。免疫系の異常や血管の炎症が原因で起こることがあります。
白血病などの血液疾患では、正常な血液成分が作られにくくなり、出血傾向が強まります。内出血に加えて、倦怠感や発熱、体重減少などの症状がある場合は、早めに医療機関を受診してください。
肝臓疾患がある場合も、血液凝固因子の産生が低下して出血しやすくなります。肝機能が悪化すると、内出血だけでなく鼻血や歯茎からの出血も起こりやすくなるのです。
西洋医学とは異なる視点で、東洋医学では内出血を身体全体のバランスの乱れとして捉えます。特に「瘀血(おけつ)」という概念が深く関わっています。
瘀血とは、血の流れが滞って停滞している状態を指します。新鮮な血液が身体の隅々まで行き渡らず、古い血液が溜まってしまうイメージです。
東洋医学では、気・血・水という3つの要素が身体を巡っていると考えます。このうち血が滞ると、さまざまな不調が現れるとされています。内出血はまさに、血の巡りが悪くなっているサインの一つなのです。
瘀血の状態では、毛細血管が弱くなり破れやすくなります。また、血液の粘度が高くなることで血管に負担がかかり、ちょっとした刺激で内出血が起こりやすくなるのです。舌の裏側の静脈が紫色に膨らんでいる方は、瘀血の傾向があるといわれています。
瘀血を引き起こす大きな要因が、身体の冷えとストレスです。現代人の多くが抱えるこの2つの問題が、血の巡りを悪くしているのです。
身体が冷えると血管が収縮し、血液の流れが悪くなります。特に太ももは筋肉量が多い部位ですが、運動不足で筋肉が硬くなると、血流が滞りやすくなります。デスクワークで長時間座っている方は、太ももの血流が特に悪くなりがちです。
ストレスは気の流れを停滞させ、それに伴って血の流れも悪くなります。東洋医学では「気血同源」といい、気と血は互いに影響し合うと考えられています。イライラしやすい方や、肩こりが慢性化している方は、気血の滞りがある可能性が高いでしょう。
東洋医学では、人の体質をいくつかのタイプに分類します。内出血ができやすい方は、以下のような体質である可能性があります。
自分がどの体質に当てはまるかを知ることで、適切な対処法が見えてきます。体質改善には時間がかかりますが、根本から内出血しにくい身体を作ることができるのです。


太ももに内出血を見つけたら、適切な対応で早期回復を促すことが大切です。時期によって対処法が異なるので、段階に応じたケアを行いましょう。
内出血ができてすぐの時期は、炎症を抑えて出血の拡大を防ぐことが最優先です。RICE処置という応急処置の基本を実践しましょう。
| 処置 | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| Rest(安静) | 患部を動かさず安静にする | 出血の拡大を防ぐ |
| Ice(冷却) | 15〜20分冷やして休憩を繰り返す | 炎症と腫れを抑える |
| Compression(圧迫) | 弾性包帯で適度に圧迫する | 内出血の範囲を限定する |
| Elevation(挙上) | 患部を心臓より高い位置に保つ | 血液の流入を減らす |
冷やす際は、氷嚢や保冷剤をタオルで包んで使用します。直接皮膚に当てると凍傷のリスクがあるので注意してください。一度に長時間冷やすよりも、こまめに繰り返す方が効果的です。
この時期に絶対にやってはいけないのが、患部を温めたりマッサージしたりすることです。血流が増えると内出血が広がってしまいます。お風呂に入る場合も、患部は避けてシャワーで済ませるのが無難でしょう。
受傷から2日ほど経過したら、今度は血流を促して治癒を早める時期に入ります。冷やすことから温めることへ、ケアの方向性を切り替えましょう。
温熱療法として、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かるのが効果的です。40度前後のお湯に15〜20分入ることで、全身の血行が良くなり、内出血の吸収が促進されます。余裕があれば、患部に温タオルを当てるのもよいでしょう。
軽いストレッチで太ももの筋肉を動かすことも大切です。痛みのない範囲で、ゆっくりと伸ばしていきます。筋肉の動きがポンプの役割を果たし、滞った血液を流してくれるのです。ただし、痛みを我慢してまで行う必要はありません。
この時期になると、内出血の色が青紫色から緑色、黄色へと変化していきます。これは血液が分解されて吸収されている証拠なので、心配いりません。通常、2週間ほどで完全に消えていきます。
内側からのケアとして、血管を強化し回復を促す栄養素を積極的に摂りましょう。
特にビタミンCは体内で作ることができず、毎日の食事から摂取する必要があります。ストレスや喫煙で消費されやすいので、意識して多めに摂るようにしましょう。
内出血を繰り返さないためには、日々の生活習慣を見直すことが重要です。血管を強化し、内出血しにくい身体づくりを目指しましょう。
運動不足は血流を悪化させ、内出血のリスクを高めます。激しい運動は必要ありませんが、日常的に身体を動かす習慣をつけましょう。
ウォーキングは最も手軽で効果的な運動です。1日30分程度、少し早足で歩くだけで全身の血行が良くなります。太ももの大きな筋肉を使うことで、下半身の血液循環が改善されるのです。通勤時に一駅分歩く、エレベーターではなく階段を使うなど、日常の中で運動を取り入れる工夫をしてみてください。
太もものストレッチも効果的です。座ったまま足を前に伸ばして前屈する、立った状態で片足の膝を曲げて後ろに引き上げるなど、簡単な動きで構いません。デスクワークの合間に定期的にストレッチを行うことで、血流の滞りを防げます。
筋力トレーニングで筋肉量を増やすことも重要です。筋肉は血液を心臓に戻すポンプの役割を果たすため、筋力が低下すると血流が悪くなります。スクワットやレッグレイズなど、太ももを鍛えるトレーニングを週に2〜3回行うとよいでしょう。
冷えは血流を悪化させる大きな要因です。特に女性は冷え性の方が多く、注意が必要です。
入浴は身体を温める最も効果的な方法です。シャワーだけで済ませず、湯船にゆっくり浸かる習慣をつけましょう。38〜40度のぬるめのお湯に20分ほど入ると、副交感神経が優位になりリラックス効果も得られます。炭酸系の入浴剤を使うと、さらに血行促進効果が高まります。
服装にも気を配りましょう。太ももが冷えないよう、冬場は保温性の高いタイツやレギンスを着用します。夏でも冷房が効いた室内では、ひざ掛けなどで冷え対策をすることが大切です。
温かい飲み物を意識して摂ることも効果的です。生姜湯や紅茶、ハーブティーなど、身体を内側から温める飲み物を選びましょう。逆に、冷たいドリンクばかり飲んでいると内臓が冷えて血流が悪くなります。
ストレスは自律神経を乱し、血管の健康に悪影響を及ぼします。完全にストレスをなくすことは難しいですが、上手に付き合う方法を見つけることが大切です。
深呼吸や瞑想は、簡単にできるリラックス法です。1日5分でも、静かな場所でゆっくりと呼吸を整えるだけで、副交感神経が活性化されます。腹式呼吸を意識して、息を吐く時間を長めにするとより効果的です。
趣味の時間を持つことも重要です。好きなことに没頭している時間は、脳がリラックスモードに入ります。音楽を聴く、本を読む、手芸をするなど、自分が心から楽しめることを見つけてください。
質の良い睡眠は、身体の修復機能を高めます。寝る前のスマホやパソコンは控えめにし、寝室を暗く静かな環境に整えましょう。就寝時刻と起床時刻を一定にすることで、体内リズムが整い睡眠の質が向上します。
多くの内出血は自然に治りますが、以下のような場合は速やかに医療機関を受診する必要があります。重大な病気のサインを見逃さないことが大切です。
これらの症状がある場合は、血液検査や画像検査が必要になることがあります。何科を受診すべきか迷う場合は、まず内科や整形外科で相談してみましょう。症状によっては、血液内科や皮膚科への紹介となることもあります。
特に高齢の方や、持病で薬を服用している方は、些細な変化でも医師に相談することをおすすめします。早期発見・早期治療が、重症化を防ぐカギとなります。
鍼灸や漢方など、東洋医学には内出血の根本原因にアプローチする方法があります。西洋医学とは異なる視点で、身体全体のバランスを整えることを目指します。
鍼灸治療は、経絡という気血の通り道を整え、身体のバランスを回復させます。内出血ができやすい方は、瘀血の状態にあることが多く、それを改善するツボに鍼やお灸を施すのです。
太ももには胃経、脾経、肝経など複数の経絡が走っています。これらの経絡上にあるツボを刺激することで、局所の血流が改善され、内出血の吸収が促進されます。また、全身の気血の巡りが良くなることで、内出血ができにくい体質へと変化していくのです。
鍼治療は痛そうというイメージがあるかもしれませんが、実際には髪の毛ほどの細い鍼を使うため、ほとんど痛みを感じません。むしろ、施術後は身体が軽くなり、リラックスできたという感想を持つ方が多いでしょう。
漢方薬は、個人の体質に合わせて処方されます。内出血ができやすい方には、瘀血を改善する生薬が配合された漢方が用いられることが多いです。
代表的なものに、桂枝茯苓丸や桃核承気湯、当帰芍薬散などがあります。これらは血の巡りを良くし、停滞した血液を流す働きがあります。ただし、漢方薬は体質によって合う合わないがあるため、専門家に相談して処方してもらうことが大切です。
漢方薬は即効性よりも、継続することで体質を根本から変えていくものです。数か月から半年ほど服用を続けることで、内出血ができにくい身体へと変化していくでしょう。
東洋医学の考え方を取り入れたセルフケアも効果的です。毎日続けることで、少しずつ体質が改善していきます。
足三里というツボは、膝下の外側にあり、胃腸の働きを整え気血を補う効果があります。親指で優しく押したり、温灸で温めたりすることで、全身の気血の巡りが良くなります。1日3〜5分程度、朝晩2回行うとよいでしょう。
血海というツボは、膝の内側の上にあり、血を補い巡らせる働きがあります。このツボも同様に、指圧やお灸で刺激することで、内出血の予防や改善につながります。
腹式呼吸も東洋医学的なセルフケアの一つです。深くゆっくりとした呼吸は、気の巡りを整え、それに伴って血の流れも良くなります。特に就寝前に行うと、リラックス効果も得られて一石二鳥です。
太ももの内出血は、軽い打撲から身体の内側のサインまで、さまざまな原因で起こります。多くは時間とともに自然に治りますが、頻繁に繰り返す場合や他の症状を伴う場合は、専門家への相談が必要です。
日常生活では、バランスの取れた食事で血管を強化し、適度な運動で血流を改善することが予防につながります。身体を冷やさず、ストレスを溜め込まないことも大切なポイントです。
東洋医学の視点では、内出血は瘀血という血の滞りのサインと捉えます。鍼灸治療や漢方薬で体質を根本から改善することで、内出血ができにくい身体づくりができるのです。
内出血を繰り返してお悩みの方、原因がわからず不安を感じている方は、一人で抱え込まず、医療機関や鍼灸院などに相談してみてください。適切な対処と予防で、健やかな毎日を取り戻しましょう。