
院長:泉お気軽にご相談ください!


朝、起きたら布団の端にいた。夜中に何度も目が覚める。隣で寝るご家族に「また蹴られた」と言われてしまった。そんな経験、ありませんか?実は、寝相が悪いという状態は、単なる「寝ぐせ」ではなく、身体やこころが発しているサインである場合があります。
今日は、寝相の悪さに隠れた原因と、東洋医学の視点から見た改善のヒントをお伝えしたいと思います。


夜中に何度も寝返りを打ったり、朝になると布団から出ていたり…そんな状態が続いているとしたら、それは身体がなんとかしてほしいと訴えているサインかもしれません。30年間で17万人以上の方を診てきた経験から、寝相の乱れと身体の不調には、深いつながりがあると感じています
寝相の乱れは、一見すると「眠りが浅いから」と片付けられがちです。ですが実際には、身体の内側で起きているさまざまな不調が、夜の寝姿に表れてくることがよくあります。ここでは、よく見られる原因をいくつかご紹介しますね。
睡眠中、私たちの身体は自律神経のはたらきによってリラックス状態に切り替わります。ところが、日中のストレスや疲労が蓄積すると、夜になっても交感神経が優位なままになってしまうことがあります。交感神経が高ぶった状態では、筋肉がうまく緩まず、身体が落ち着きを失って、頻繁に寝返りを打つようになってしまうのです。
現代の生活では、スマートフォンやパソコンの使いすぎ、仕事のプレッシャー、人間関係の悩みなど、自律神経を乱す要素がたくさんあります。「なんとなく眠れていない気がする」という感覚がある方は、自律神経の状態を疑ってみるのも大切な視点です。
寝相の悪さには、身体の冷えと血流の滞りが深く関わっていることがあります。血の巡りが悪いと、身体は無意識のうちに温かい体勢を求めて動き続けます。特に冬場や冷房の効いた環境で、朝起きると毛布をはいでいたり、丸まって寝ていたりする方は、冷えのサインかもしれません。
東洋医学では、冷えは「気血の滞り」と考えます。胃腸の働きが弱まっていたり、過労や睡眠不足が続いていたりすると、血の巡りが乱れやすくなります。
肩こり、腰痛、膝の違和感。これらがある方は、ある一定の姿勢をとり続けると痛みや不快感が出るため、眠りながら姿勢を変え続けることがあります。「朝起きたら腰が痛い」という方の中には、夜中にずっと身体をよじっているケースも少なくありません。
痛みや不快感は、眠りが浅くなる直接の原因にもなります。睡眠の質が下がると、さらに疲れが取れなくなるという悪循環に陥ってしまうのです。
「うちの子、夜中にいつの間にか180度回転している!」と笑いながらも、内心では心配されている親御さんも多いのではないでしょうか。子どもの場合、寝相が悪いことは必ずしも悪いことではありません。
子どもは大人に比べてレム睡眠(浅い眠り)の割合が高く、身体が活発に動きやすい状態にあります。また、体温調節機能が未発達なため、無意識に熱を逃がそうと布団を蹴ったり、涼しい場所を求めて動いたりします。これ自体は正常な発育の一環です。
ただし、あまりにも激しい動きが続く場合や、いびきをかいている場合、日中に極端に眠そうにしている場合などは、睡眠時無呼吸などの可能性も視野に入れて、専門家に相談することをおすすめします。
子どもが布団を蹴ってしまうのは仕方ないとしても、身体が冷えてしまうのは心配ですよね。スリーパー(着る毛布)の活用や、寝室の温度管理など、工夫できることはたくさんあります。完全に動きをとめようとするより、冷えにくい環境を整えてあげる方向で考えると、お子さんも親御さんも楽になれますよ。
大人になってから突然寝相が悪くなった、あるいは以前よりも明らかにひどくなったという場合は、身体の変化に目を向けてみてください。
以下のような症状が重なっている場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
これらは、睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群など、医療的な対応が必要な状態のサインであることがあります。「寝相が悪いだけだから」と放置せず、まずは原因を探ることが大切です。
西洋医学では症状に対して薬や処置でアプローチしますが、東洋医学では「なぜその症状が起きているのか」という根本の原因を探ります。私が30年間、17万人以上の方を施術してきた中で感じるのは、身体の不調はすべてつながっているということです。
東洋医学では、睡眠の質は「気」と「血」の巡りに深く関わっていると考えます。夜になると気血は内側に引き込まれ、身体は休息モードに入ります。ところが、気血の流れが滞っていると、この切り替えがうまくいかず、眠りが浅くなったり、身体が落ち着かなかったりするのです。
鍼灸は、気血の流れを整えるツボに働きかけることで、身体本来の自然治癒力を高めます。施術後に「身体がじんわり温まった」「久しぶりに深く眠れた」とおっしゃる方がとても多いのも、気血の巡りが整ったサインだと思っています。
当院で行っている唾液アミラーゼ検査では、ストレスの度合いを数値として確認することができます。初めて来院された方の検査結果を見ると、ご自身が思っている以上にストレス値が高いケースが非常に多いのです。「そんなにストレスを感じていないつもりだったのに」とおっしゃる方が多いことも、印象に残っています。
ストレスは自律神経を乱し、自律神経の乱れは睡眠を妨げ、睡眠不足はさらにストレス耐性を下げる。この悪循環を断ち切るためには、身体の内側からアプローチすることが欠かせません。
専門家に相談する前に、日常生活の中でできることもあります。すぐに試せることをいくつかご紹介しますね。
寝る1時間前からスマートフォンやパソコンの画面を見るのをやめ、ぬるめのお湯でゆっくり入浴することで、副交感神経が優位になりやすくなります。また、寝室の温度は夏は26度前後、冬は18度前後が理想的とされています。身体が心地よいと感じる環境を整えることが、深い眠りへの第一歩です。
長時間同じ姿勢でのデスクワークや、運動不足は、筋肉のこりや血行不良を招きます。1時間に一度は立ち上がってストレッチをする、通勤時に少し歩く距離を増やすなど、身体を動かす習慣をつけることが大切です。特に夕方の軽い運動は、夜の体温の下がり方を促進し、眠りの質を高めることにつながります。
東洋医学では、胃腸の状態と睡眠は密接に関わっていると考えます。就寝直前の食事は胃腸に負担をかけ、眠りを浅くする原因になります。また、腸内環境が乱れると自律神経にも影響が出るため、発酵食品や食物繊維を意識的に摂ることも睡眠改善に効果的です。
寝相の乱れは、枕を変えたり寝具を整えたりすることで改善できる場合もあります。ですが、それだけでは解決しないケースも多くあります。身体の奥にある自律神経の乱れ、冷え、気血の滞りといった根本的な原因にアプローチしなければ、同じ不調が繰り返されてしまうことがよくあるのです。
30年間でさまざまな症状の方を診てきた私が一番伝えたいのは、「どうせ年のせいだから」「忙しいから仕方ない」と諦めないでほしい、ということです。身体はいつでも変わる力を持っています。きっかけさえあれば、何歳からでも、どんな状態からでも、身体は応えてくれます。
ひとりで抱え込まず、気になることがあればいつでもご相談ください。あなたの身体とこころの健康を、一緒に考えさせていただきます。